大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和58年(ラ)112号 決定

抗告人

華乙三郎

右代理人

野瀬高生

西村雅男

相手方

華甲子

右法定代理人親権者母

華丙子

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一本件抗告の趣旨は、「原審判を取消し、更に相当の裁判を求める。」というにあり、その理由は、別紙抗告理由(一)及び同(二)記載のとおりである。

二当裁判所の判断

1  抗告人の抗告理由(一)の一について

記録によれば、相手方の父華丁男は転々と職を変え、現在は抗告人の経営する不動産の売買、仲介、管理、土木建築の請負等を営む華商事株式会社に勤務し、月約一〇万円の給料を得ているが、そのうち月五万円を相手方に扶養料として送金しており、それ以上の扶養料の負担は経済的に困難であり、一方抗告人は相手方の祖父(丁男の父)であるところ、右会社の代表取締役として月約五〇万円の報酬を得ており、抗告人の家族は妻の雪子のみで、同女も右会社の取締役として月五万円の報酬を得ていることが認められるのであつて、右事実によれば、原裁判所が、相手方から父丁男に対して扶養料の支払を求める審判事件が別件として係属しているに拘らず先に本件について審判したとしても、違法であるとはいえない。よつて、抗告人の右主張は採用することができない。

2  同(一)の二について

記録によれば、相手方は華丁男、華丙子間の長女として昭和五〇年九月四日生れたのであるが、重症と軽症の中間位の精神障害があること、相手方の父丁男と母丙子は婚姻関係が破綻して別居し、事実上の離婚状態にあり、現に丙子が相手方を監護していることが認められ、右事実によれば、相手方はその母丙子において引続き監護するものとするのが相当である。相手方に良好な医療を受けさせることと、母丙子をして相手方を監護させることとは、抗告人がその費用を負担すればよいわけであるから、なんら矛盾するものではない。よつて、右抗告人の主張は採用することができない。

3  同(二)の一について

親権は共同行使するのが原則であるが、父母の婚姻関係が破綻して別居し、事実上の離婚状態にあり、子をその母が引取つて監護養育している本件のような場合には、母が単独で子の法定代理人として子の扶養義務者に対し子の扶養料の請求をすることができるものと解するのが相当である。よつて、抗告人の右主張は採用することができない。

4  同(二)の二ないし五について

原審判が抗告人に丙子の生活費を負担させたものでないことは明らかであり、丙子が相手方の医療に不熱心であることを認めるべき証拠はなく、その他記録によるも原審判に抗告人の主張するような事実誤認は認められない。よつて、抗告人の右主張は採用することができない。

5  その他、記録を精査しても、原審判を取消すべき違法の点は認められない。

6  そうすると、原審判は相当であつて、本件抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとして、主文のとおり決定する。

(川添萬夫 新海順次 佐藤榮一)

抗告理由(一)〈省略〉

抗告理由(二)

一、申立人甲子は、未成年者で現在両親の共同親権下にあるところ本申立は、両親が共同して親権を行使してなすべきであるにかゝわらず母丙子のみが、単独でしかも他方の親権者の意思に明らかに反してなしている。

父丁男は、抗告人(祖父)と同居し申立人の引取扶養専門医療専一を希望しているのである。

当該申立は不適法といわざるを得ない。

本来、かゝる申立は、離婚し、丙子の単独親権が確定したうえでなすべきである。〈以下、省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例